【日本文学のすゝめ】#6 小林多喜二 『蟹工船』
闇から出てきた人こそ、本当に光のありがたさがわかるんだ。
小林多喜二 『蟹工船』
おすすめ度
おもしろさ ★★★☆☆
読みやすさ ★★☆☆☆
*「おもしろさ」は僕の独断と偏見による評価です。
「読みやすさ」は文体や必要な予備知識、本文の長さなどから評価しています。
*先に「【日本文学のすゝめ】#1」の記事を読むことをおすすめします。
たまには文学を
久しぶりに日本文学について書きます。
勝手にお休みしていましたが、理由は一つ。
時間がかかる
僕の場合、だいたい一つの記事に30分から1時間くらいかけていますが、日本文学の紹介記事は3時間かかる笑
3時間かけたらアクセスも3倍か、というとそういうわけではなく、アクセス数上位に来るのは20分で書いた記事だったりする。
でも、アクセス数じゃないですからね。
読んで欲しいと思うから書くだけです。
頑張って書くのでどうかみなさんも頑張って読んでください。
プロレタリアとは何ぞ
小林多喜二といえば、プロレタリア作家です。
では、プロレタリアって何のことかご存知ですか?
【プロレタリア】
資本主義社会において、生産手段を持たず、自分の労働力を資本家に売って生活する賃金労働者。
難しい感じで書いてありますが、要するに労働者のことです。
ただ、現代の労働者をイメージしてはいけません。
当時、今のような法や政府による統制のとれていない資本主義のもとで、労働者は馬車馬の如く働かされ、ろくな賃金ももらえず、雇い主だけがボロ儲けするといった問題が起きていました。
しかしここでいくら、「当時の労働者は大変でした。それはそれは聞くに耐えない悲惨な仕打ちを受けていました。」と言ったところで、想像もつかないでしょう。
そのためにプロレタリア文学があります。
プロレタリア文学は労働者による文学。当時の悲惨な労働の現状を世に広めるために、著者は自らの命をかけて執筆しました。
『蟹工船』もその一つ。タイトルに違わず、蟹工船に乗り働かされる労働者の現状と、権力者に対抗するため一致団結して戦う姿が描かれています。
対抗のための一致団結は要するに社会主義運動です。
そのためしばしば、プロレタリア文学=社会主義文学と結び付けられるわけです。
地獄の漁船
蟹工船は、非常に大きな船です。北海道から出航し半年ほどの漁を行います。漁だけでなく、獲った蟹の加工も船内で行っています。すなわち、漁船でありながら工場でもある、逆に言うと漁船でも工場でもない(意味わかりますか?)。そのむちゃくちゃな理論によって、蟹工船の所有者は漁船にかかる税金も工場にかかる税金も逃れます。ボロ儲けです。
『蟹工船』では、漁に出た蟹工船の中で、働かされ、働かされ、働かされた末に亡くなっていくことすらある労働者の姿が描かれています。
壮絶です。覚悟してください。
今こそ『蟹工船』を読もう
『蟹工船』は少し前に話題になったことがありました。
ブラック企業や過労死について騒がれたときです。
時代は違うし、職種も全く違いますが、『蟹工船』で描かれている惨劇と現代の日本のブラック企業の実態は繋がるものがあるのではないでしょうか。
彼ら労働者の惨状を見て何を思うかはあなた次第です。是非その目で確かめてください。
*『蟹工船』の登場人物は当時の北海道なまりで話します。よって非常に読みにくい箇所があります。なのでセリフに関しては、だいたいこんなもんか、と広い心で読むことをお勧めします。